日光団参始末記(法話第17話)

 10月2日(木)、第9回目の日帰りバス旅行ということで、檀信徒の皆さんと日光に行ってまいりました。心配された台風15号も太平洋を南の方に去り、秋晴れの好天気に恵まれました。
 指扇を午前7時30分に出発、途中埴生野サービスエリアで休憩を取り、日光の輪王寺駐車場に着いたのは、予定よりも訳5分遅れの10時25分でありました。輪王寺財務部長の今井昌英師が駐車場で我々の到着を「今か今か」と待っていてくれた様子でした。挨拶もそこそこに、宝物殿に入り大きな日光山の絵図を前に、今井部長の日光についてのご説明をお聞きいたしました。
 当日は日光山中興の慈眼大師天海大僧正ののご命日に当たり、365回忌の法要「長講会(じょうごうえ)」があるということで、急いでおられたということでした。

日光山について
 奈良時代、勝道上人によって輪王寺と二荒山神社が開創された日光山は、神仏習合と山岳宗教の霊山として知られております。
 江戸時代に天台宗の僧侶である天海師が将軍徳川家康の深い信任を得て日光山貫主となり、家康の死後、御廟「東照宮」を創建。明治維新の神仏分離まで二社一寺が一体となって栄えてきました。今年は百八歳の長寿を全うした天海師の365回忌に当たります。
 天海師の詠まれたお歌に、「気は長く 勤めはかたく 色うすく 食細うして 心ひろかれ」とあります。我々も見習いたいものです。

輪王寺三仏堂参拝
 宝物殿から近いところに、日光山の中心のお堂(本堂)である「三仏堂」があります。本尊には千手観音、阿弥陀如来、馬頭観音の三体の仏様が祀られております。三体の仏様が祀られているから「三仏堂」といいます。
 ガイドさんのお話ですと、三仏は日光の山を象徴しており、千手観音(男体山)はお父さん、阿弥陀如来(女峰山)はお母さん、馬頭観音(太郎山)は子どもを表しており、家族円満の様子を物語っているともいわれます。
 お堂の創建は平安時代と伝えられておりますが、今の建物は徳川三代将軍家光公が再建されたということです。
 現在工事中ですが、お堂の中、三体の仏様の真下まで行って拝むことが出来ます。参拝の皆さんと一緒に般若心経をお唱えし、旅の無事を祈りと日頃の安穏に感謝の気持ちを捧げてまいりました。
 ちなみに、そのガイドさんは春日さんという方ですが、日光の名物ガイドさんで、みのもんたに似ており、テレビの中継等があるときによく見るガイドさんでした。

東照宮参拝
 三仏堂の次に東照宮に向かいました。
 東照宮は徳川初代将軍家康公を御祭神におまつりした神社であります。
 石の鳥居をくぐり、まっすぐ進んで急な勾配の石の階段を登り、表門から境内に入ると、そこは別空間。極彩色の絢爛豪華な建造物が立ち並び、見るものを圧倒させずにはおかないものがあります。さすがに天下人の廟所。特に陽明門のの彫刻を一つ一つ観ていると時が経つのを忘れそう。そこから日暮門の異名があるとか。
 見ざる、言わざる、聞かざるの三猿や眠り猫、鳴竜など、観る者を飽きさせることがない、日本屈指の
彫刻物の宝庫でもあります。
 神社の境内の中ではありますが、本地堂には薬師如来がお祭りされており、神仏習合の名残りとして貴重な建物もあります。

二荒山神社参拝
 東照宮の参拝を終え、上新道(馬車道を)二荒山神社へと向かいます。とても馬臭がきつい道でありますが、絢爛豪華な東照宮から閑静な二荒山神社への道としては落ち着いた雰囲気の趣のある道であると思いました。
 「日光」という名称は、元は「二荒」であったと伝えられ、「二荒」に「日光」の文字が当てられたといいます。
 この二荒山神社の御祭神は、二荒山大神という親子三神であります。父として大己貴命(おおなむちのみこと=大国主命)、母として田心姫命(たごりのひめのみこと)、子として味耜高彦根命(あじすきたかひこねのみこと)が祭られております。
 古くより、霊峰二荒山(男体山)を、神の鎮まりたもう御山として尊崇したことから、御山を御神体山として仰ぐ神社で、日光の氏神様でもあります。
 当日は茅の輪くぐりがあり、檀信徒の皆さんも、疫病払いのため、茅の輪を八の字に周りお払いをしておりました。

大猷院御廟参拝
 二荒山神社の参道を下ってくると、医師団の途中に縁結びの木があります。石段を降り終わり、右のほうに行きますと、徳川家三代将軍家光公の御廟である「大猷院(たいゆういん)」があります。家光公の戒名を「大猷院殿贈正一位大相国公」といい、御廟の名称もその戒名から「大猷院」と称されております。
 祖父に当たる家康公の廟所をしのいではならない、という遺命により、彩色や彫刻は控えめに造られておりますが、かえってそれが重厚で落ち着いた雰囲気を醸し出しております。
 入り口の「仁王門」から墓所の入り口に当たる「皇嘉門」に至るまで、意匠の異なる大小六つの門で、境内が仕切られており、門をくぐるたびに景色が変わり、まるで天上世界へと昇って行くような印象を受けます。檀信徒の皆さんも、知らず知らずのうちに四百数十段にわたる長い石段を登りきることが出来ました。
 大猷院の中心伽藍である本殿は、その正面は家康公の墓所である東照宮の鬼門の方向を向いています。その構成は、拝殿・相の間・本殿からなっています。東照宮が「権現造り」を中心とした神仏習合形式であるのに対し、大猷院廟は「仏殿造り」の純仏教形式となっております。
 拝殿において輪王寺の藤沢克悦師のご説明をお聞きし、大猷院の素晴らしさを実感していた様子でした。お土産に「家光香」を買い入れ、皆さん先祖様の霊前にお供えになったことと思います。

田母沢御用邸記念公園散策
 輪王寺三仏堂からずっと歩いて大猷院まで参拝してきたので、皆さんお疲れのようでした。昼食は近くの日光千姫物語というホテルでいただきました。だいぶ喉が乾いていたようでがビールをとても美味しそうに飲み干していました。
 昼食後は、すぐ近くの「田母沢御用邸記念公園」を1時間ほど散策いたしました。この御用邸は明治33年に嘉仁親王(大正天皇)のご静養のために造営され、昭和22年に廃止されるまで、三代にわたる天皇・皇太子がご利用されました。
 閑静な建物でありますが、いたるところにレトロな雰囲気が醸し出され、一風変わった妙味を感じさせる御用邸でした。

 以上で今回の日光団参の全ての日程が終了し帰途につきました。途中、日光たまり漬けのお店に寄り、しこたま漬物を買い込んだようです。
 帰りのバスも順調に進み、車内ではカラオケなども披露され、和気藹々のうちに出発地に無事到着いたしました。

2008-10-06 七五三とお宮参り(法話第18話) 聖地天台山ー日本天台宗の大本ー(法話第16話)
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