四国のお遍路と四門(法話第15話)
日本では「四」という数字が嫌われているらしい。すなわち「四」の読み仮名「し」は「死」に通じるということであろうか。病院や、旅館の部屋番号に「4」または「四」が抜けていたりもすることがあるのも、そのことによるものであろう。
仏教では「四」を用いた大切な語句が多い。「四門」「四有」「四諦」「四天王」「四無量心」「四弘誓願」等々挙げればきりがない。
その中、発心・修行・菩提・涅槃という、仏教の修行を通して悟りに至る仏道を、四段階にまとめた「四門」もやはり「四」が付く大事な仏教用語である。
第一の「発心」とは発菩提心といい、悟りを得ようとする心を起こすことである。第二の「修行」とは悟りをめざして心身浄化を習い修めること、第三の「菩提」とは煩悩を断ち切って悟りの境地に達すること、第四の「涅槃」とは煩悩の火を消し、智慧が完成し、一切の悩みや束縛から脱した、円満・安楽の境地のことをいう。
第一の発心、第二の修行までは何とか往くことが出来そうであるが、第三の菩提、第四の涅槃の完全なる境地までは、この身今生においては遠い道のりのようである。
いわゆる小乗仏教では、この身を滅して菩提・涅槃に往きたいと願い、実行する修行者も居たようである。(「灰身滅智」。)
昨今、硫化水素をによって自殺をする人が増えているという。この世の苦しみに耐えかねて自らの命を絶つというこであろうが、残された人に与える影響をも考えると、何とかこの世に留まり与えられた命を全うしていただきたいものである。
今一度、心を新たにして生きてみようという気持ちになることも「発心」ということが出来よう。発心の後には修行があるのだから、苦しいと思っても耐えて生きること肝要である。
発心・修行・菩提・涅槃の四門を八十八ヶ所の札所に当てはめ、四つの国を巡ることで有名なのが四国の巡礼である。
徳島県(阿波)・・・発心の道場、高知県(土佐)・・・修行の道場、愛媛県(伊予)・・・菩提の道場、香川県(讃岐)・・・涅槃の道場の四県(四国)の津々浦々を巡って八十八ヶ所の霊場を巡拝する。徒歩で全てを回ると総距離1200キロメートル、2ヶ月位かかるという。良く出来たシステムの霊場である。
過日、四国を旅行した折に、発心の道場である徳島県の、一番霊山寺、二番極楽寺、涅槃の道場の香川県の弘法大師誕生の地、七十五番善通寺、天台宗の寺院である八十七番長尾寺、そして結願の寺である八十八番大窪寺等をお参りさせていただいたが、全ての寺院をのんびりと巡ってみたい気持ちに駆られた。
2008-05-10