梟の福多郎の話(法話第13話)
新年明けましておめでとうございます。皆様には輝かしい初春をお迎えのことと、謹んでお慶び申し上げます。
永らく「今月の法話」をお休み状態のままにしてしまいました。年も新たになり、また再開させていただきます。今年こそ、なるべく休眠状態にせず頑張って更新してゆくつもりでおりますので、宜しくお付き合いのほどお願い申し上げます。
さて、今回は久し振りということもありますので、拙僧の身の回りのことを書かせていただき、お茶を濁したいと思います。
当山の境内には、梟(ふくろう)の石像が建っております。その名を「福多郎(ふくたろう)」と申します。福正寺の「福」の字を取り、福が多い、幸福を運ぶ鳥ということで、梟の「福多郎」を拙寺のマスコットといたしました。この福多郎の原型は拙寺客殿の玄関に飾ってあります、信楽焼きの梟であります。高さ13センチメートルほどの小さな焼き物の梟です。
もう5年ほど前になりますか、埼玉教区の比叡山参拝旅行の折、京都の嵯峨野に寄ったときに、ふと道端の小さな焼き物屋の店先に並んでいたこの梟に、妙に心が動いたのでございます。ちょっと首を斜めに傾げて佇む梟。何かを私に投げかけているように思え、是も非も言わずに買い求めました。
買ってきた梟の置物を、訪れる客人を出迎えるかたちで玄関に飾りました。暫くするうちに、玄関においでになる客人たちをお迎えするだけではもったいない、と思うようになりました。そこで石屋さんに頼みこみ、この梟と同じ形のもので、もっと大きいものを石で作り、境内に置きたいと思うようになりました。ところが、日本で作ると高くつくから、中国で彫って日本に持ってくるということになりました。ついては見本として本物の焼き物の梟を暫く貸してくれということになり、本物の福多郎は、数ヶ月の間海を渡り中国へと行くことになりました。
その間、主を失った置き台だけが、客殿の玄関に置かれることになりました。その寂しさたるや何とも言い表せません。それよりも心配だったのは、同じ姿かたちであの福多郎が拙寺に戻ってきてくれるかということでした。
三月ほどのち、石屋さんがあの福多郎を携えて、大きな石像の梟とともに戻ってきました。かなり乱暴に汚れた手で持ち運びされたせいか、少し薄汚れて精気がないように感じられました。そのとき後悔しました。この本物の福多郎を渡すのではなかった・・・・・・と。
ともあれ石像の梟の福多郎は境内に安置され、本物の信楽焼きの福多郎も客殿の玄関で訪れる客人たちを暖かく見守ってくれております。
みなさまも拙寺へおいでの際には、是非とも境内の福多郎にお参りして福をいただき、他の人々にも、その福の何分の一かを分けてあげていただきたいと存じます。
くれぐれも福の独り占めはなさらぬように。独り占めにするといつのまにか、福が逃げてゆくかもしれません??????
2008-01-02