「お地蔵さま」について(法話第26話)
明けましておめでとうございます。皆様には輝かしい初春をお迎えのこととお慶び申し上げます。寒い日々が続きますがお体を大切にお過ごしください。今年も皆様にとって良き年になりますようお祈り申し上げます。
さて、今回の法話では、読者の方からのメールでのご質問にお答えして、「お地蔵さま」について思うところを述べさせていただきます。
路傍に立って、行き先が分からずに迷っている人や、夢中で遊んでいる子供たちをそっと見守っていてくれる、そんな仏さま(菩薩)がお地蔵さまです。
「これこれ石の地蔵さん 西へ行くのはこっちかえ だまっていてはわからない ぽっかり浮かんだ白い雲 何やらさみしい旅の空 いとし殿御のこころの中は 雲におききと言うのかえ」
この歌は「花笠道中」といって 往年の名歌手の美空ひばりさんが歌った唄です。西へ行くというのは、西方極楽浄土へ行くという意味で、極楽へ行く道をお地蔵さんに聞いているわけです。でもお地蔵さんはずっと黙ってばかり。空を見ると白い雲が浮かんでいる。雲というのは、霊を表すともいわれ、雲とともに西へ向かって旅をする。西方浄土への旅を男女の恋の駆け引きにひっかけ、愛しい人の心のうちを、お地蔵さんに聞きたいのだけれども、黙っていて教えてくれず、まるで雲に聞きなさいと言っているようだ、というのです。
雲は極めて遠い場所、高い場所という意味があります。また、行動・所在が確かでない物事にたとえらたり、火葬の煙にもたとえられます。そういうところから、雲は霊魂を現わすということになったのでしょう。
白い雲とお地蔵さま、とてもお似合いのイメージです。
さて、お地蔵さまは正式には地蔵菩薩といいます。「地蔵」というのはサンスクリット(梵語)の「クシティ・ガルバ」ということばを漢字に訳したものです。クシティは「大地」の意味で、ガルバは「胎」とか「蔵」とかに訳されています。つまり、「大地の母胎」という意味で、インドでは、大地の神の一種で、財宝をつかさどる神であったといいます。
また地蔵菩薩は、お釈迦さまが滅せられて、56億7000万年後に弥勒菩薩が下生して弥勒如来になるまでの間、無仏のこの世にいらっしゃって、六道の苦しみを持つ衆生を救ってくださるといわれます。
六地蔵とは、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の六つの輪廻(生まれ変わり死に変わりすること)の世界にお一人ずつおいでになって、苦しみを持つものを救ってくださるのです。
お地蔵さまにお参りするときには、お体をきれいにしてさしあげ、お水、お花、お香を供え、手を合わせ、「南無六道能化地蔵菩薩」と三篇お唱えし、お地蔵さまの御真言「オン カカカ ビサンマエイ ソワカ」と数回お唱えいたしましょう。
石のお地蔵さまにお願いしても、黙ってばかりで、雲にお聞きなさいと言うかもしれませんョ。
福正寺 住職 木 本 清 玄
2011-01-24